お知らせ

大鹿村の地域人口ビジョンについて


移住者を増やす施策を考えるとき、移住者の年代や家族構成によって、希望する空き家のタイプ、仕事、移住後に参加するコミュニティなど、必要とする事が異なります。そこで年代別の転入・転出の動きを分析しました。

年齢階層ごとの人口変化

次のグラフは、小さな町村の平均的な人口変化率を表した年齢階層グラフです。横軸は年齢(5歳刻み)、縦軸は人口の増減を表しています。縦軸の真ん中あたり0.0(%)の水平線が、人口が増えても減ってもいない、人口の変動がプラスマイナス0人を表すラインです。0.0(%)のラインより上へ棒が出ているとその年代は人数が増えたことを表し、0.0(%)のラインより下へ棒が出ているとその年代は人数が減ったことを表しています。

人がライフサイクルのなかで移動(移住)する時期というのはおおよそ決まっていて[A]高校、大学進学に伴って家を出る、[B20代後半から結婚などを機に定住先へ移動、[C60代定年前後に第二の人生としての移住、の3つの時期があります。下のグラフの岡山県新庄村は大鹿村と同じように村内に高校がないため、高校進学に伴い[A]の年代の人数が大きく転出しています。

(参考文献:「地域人口ビジョン」をつくる/農文協・藤山浩 編著)

大鹿村の転入・転出の特色

次のグラフは、2018年〜2022年の間の大鹿村の年齢階層ごとの人口変化をまとめたものです。

 

A
高校のない市町村では、高校進学に伴って多くの人が転出します。大鹿村でもその傾向が出ています。

B
20〜30代では男性の転入はあるが、女性が村外へ出ていく傾向が大きいことがわかり、性別の違いがあることがわかりました。

C
全国の例では60歳定年前後は人が移動(移住)する傾向がありますが、大鹿村では60歳前後の移住者が増える傾向は大きくありません。大鹿村は車がないと生活が難しいという条件が、定年後からの生活基盤を整えることを考えた時に躊躇するのではないかと推測します。

次に、2013年〜2018年5年間の大鹿村の年齢階層ごとの人口変化のグラフを示します。

 

2013年〜2018年の5年間が、2018年〜2022年の5年間と違うところは、[B]の30代の人数が大きく増えているところです。

2013年から2018年の間に、大鹿村に何があったか調べたところ、2015年、2016年頃に行われた「やますみ」による「プチ移住ツアー」の開催によって、子どものいる世帯など数組の移住があったことや、大鹿村の空き家バンク制度が始まり、移住希望者が住める家がその時にあったことが、人口を増やす要因となったようです。グラフでは人数が大幅に増えたように感じますが、大鹿村は計算の分母となる総人口の数が少ないため、ある年齢層のみが増えたことでグラフに極端に結果が出たというのが実情のようです。

30歳前後の女性にむけてアンケートを実施

2018年〜2022年のグラフから、30歳前後の女性の転出数が多く、転入数が少ない点について、原因を知るために何か手がかりを得られるかと思い、対象の年齢の女性に対してアンケートを実施しました。アンケートは「ひよこクラブ」「乳・幼児検診」「保育所」に配布を依頼し、6枚の回答を得ました。アンケートでは大鹿村に30歳前後の女性が移住を考えるときに抵抗を感じることや、必要だと思うことを聞きました。

アンケートの回答より

移住の心理的、物理的な壁になっていると思われること

病院が遠い、小児科がない
小渋線が不便、車の運転が苦手だと大変、車酔いがあると困難
公共交通機関がほとんどない
買い物が大変、帰りが遅くなった時「コンビニで買って夕飯にしよう」ができない
欲しいものが村外に出ないと揃わない、スーパーなどのお店が少ない、店が早く閉まる
仕事がない、村にある仕事は基本アルバイト、働き口が少ない
人とのつながりを構築することに不安のある方は大変なのでは
村内の話が通通であることに抵抗がある
内輪ノリでやっている様子があるため入りづらい
移住するとなるとインフラ、ネット環境に不安を覚えるのでは
携帯の電波が届かない、何かあったときに繋がらない
P Rが足りない、ホームページを充実させた方がいい
地理的に緊急時の対処や冬の道が危険という理由で親から移住を反対された話を聞いた
移住してから人口が減っていることに不安が出てきた
冬はやっぱり寒く長い
すべてにおいて不便を感じる

こんなことに取り組むと良いのでは?というアイデア

「友人がいない限り、(大鹿に)来ることはなかった」と言われる。移住より観光より、まずは近場の飯田方面などに住んでいる人たち(友人)が遊びに来やすくすると良いと思う。
20代〜30代の女性と限定するなら「オシャレなものを増やす」
子どもが楽しめるものがあると良い。「またここに遊びに来たい」「次は大鹿のここに行きたい」というようなものがあると良い。
公園の遊具をもう少し賑やかにしたり(長い滑り台とか)、大鹿の木を使った遊具(隠れ家やアスレチック)を作ったら良いのでは。
(山村留学のような)保育園留学で家族が大鹿に来る仕組みも良いかも
ここにしかない何かがあると良い。有機農業にすごい力を入れているとかフリースクールやほかと違う教育なども。
興味を持ってもらうため、具体的な移住イメージを描いてもらうためにネット上のP RH Pの充実はまだまだ必要
商業施設を増やす
抵抗があったことも慣れてくると少なくなってきた

 

アンケートを実施してみて、どんな年代でも感じている困りごともありましたが、子育て世代や、30歳前後の女性ならではと思われる意見もありました。

例えば、移住後に困難だと感じている点について、運転の不安などから友人との交流が難しいという意見が数件ありました。将来、移住者を増やして行くことを考える時、近隣市町村に住む友人との交流がしやすくなるような工夫も必要そうだと感じました。

アンケートの結果を参考に、30歳前後の女性が村にとどまりやすくする工夫、転入しやすい仕組みについても考えていこうと思っています。